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 都議選立候補予定者に対する公開質問状とそのご回答

 「大けやきの会」では、都市のみどりに対する多様なご意見をお聞きしたいと考え、6月24日に行なわれる東京都都議会議員選挙に立候補を予定している方に公開質問状を送らせていただきました。全都の予定者の皆さんにお願いしたかったのですが、今回は、身近な問題として受けとめていただける新宿区選出の方に限らせていただきました。選管の説明会に参加した10名のうち辞退するというお一人を除いた9人の方です。
 以下に質問状と、いただいたご回答を掲載いたします。ご一緒に検討していただければ幸いです。
 ご回答をいただいた以下の6人の方には、改めて御礼申し上げます。選挙でお忙しいなかありがとうございました。

ご回答いただいた方
 中沢きみひこ(無所属)、藤井富雄(公明党)、根本二郎(無所属)、大山とも子(共産党)、西川嘉純(無所属)、とみた俊正(民主党)《ご回答をいただいた順番です。敬称は略させていただきます。以下同じ》
ご回答のなかった方
 秋田一郎(自民党)、はそべ力(無所属)、藤井雅義(無所属)
 期限後にいただきました藤井雅義氏の回答を末尾に追加いたしました(2001.06.21)



公 開 質 問 状 

新宿区選出東京都議会議員
      立候補予定者 殿
                       「大けやきの会」 代表/春日 武夫

 私たちは、新宿区百人町4丁目都営住宅建替え工事敷地内にあった、樹齢200年を越すといわれる大けやきを残してほしいと東京都にお願いをしました。しかしその願いは届くことなく、2月2日までは伐らないと私たちと約束した期日の前日2月1日夜に、大けやきは伐採されてしまいました。

 東京都には「東京における自然の保護と回復に関する条例」、新宿区には「新宿区みどりの条例」という、自然を大切にし、また大木を保護しようというような条例があります。人々が和やかな気持ちで平和に生活するためには、みどりが欠かせないものだからでしょう。また大樹は、気候緩和・大気の浄化・生物の連鎖機能など自然生態的な意義、健康的意義、防災的意義、環境心理的意義等々からいっても、若い草木の植栽や屋上緑化などでは替えることのできないような存在価値を持っているとされます。

 減り続けているといわれる都市部のみどりですが、これ以上失うことは、人々の生活にかならずや取り返しのつかない悪い影響をもたらすのではないかと私たちは考え、都市におけるみどりの実態を調査・研究し、保護する活動を行なおうと「大けやきの会」を4月1日に設立いたしました。

 そこで私たち「大けやきの会」は、都市のみどりに関して、立候補予定者の皆さんのご意見をお聞きしながら、多くの人たちと検討しあいたいと考えております。お忙しい時期とは存じますが、別紙の質問にお答えいただけますようお願い申し上げます。

※時間がなく申し訳ありませんが、お答えは、以下の方法にて6月13日(水)必着でお願いいたします。
(連絡先省略)

※皆様のお答えをまとめ、公開の方法は以下の予定です。
  マスコミ関係へ発信、会のホームページ、チラシの作成・配布




 質問

1)今年2月1日、新宿区百人町4丁目で都営住宅建替え工事を理由に、樹齢200年といわれる大けやきが伐採された事実を知っていますか?

中沢
 はい
藤井
 知っている
根本
 知っています
大山
 知っています
西川
 知っている
とみた
 知っています




2)1)で「知っている」と答えた人は、今回の都の対応をどう評価しますか?

中沢
 説明不足と対処について疑問を感じるとともに残念に思う
藤井
 東京都住宅局が依頼した樹医の診断が「移植は無理」とのことから伐採に踏み切ったこと自体はやむを得ない対応と考える。ただ監査結果の中で指摘されたように伐採にいたる都の対応については問題なしとはいえない
根本
 都の「自然保護条例」や新宿区の「みどりの条例」に照らして、違反している行為であり許せません。私は皆さんと一緒に都の責任を追及します
大山
 住民の皆さんが、けやきの移植により、都営住宅の建て替えとけやきの生存を両立させるためにぎりぎりまで努力されていたにもかかわらず、約束した期日の前夜に文字通り「闇討のかたちで伐採を強行した都の行為は、きびしく批判されなくてはならないと考えています
西川
 民意を無視した強行的な手段での対応は問題がある。日の出町ごみ処分場問題もそうだが、ボタンの掛け違いによる対立が多すぎる。はじめから議論をする場をきちんと設け、情報を公開し説明責任を果たした上で民意をいかした行政が今後求められるべき
とみた
 都の対応は、都営住宅の建て替えという目的があったとしても、住民との合意形成及び説明義務につき問題があり残念な事態でした




3)私たちは都に対してこの伐採を不当として住民監査請求を行いました。都の監査委員は監査結果において、「“東京における自然の保護と回復に関する条例”は理念の規定」で、「“新宿区みどりの条例”は保護と育成に努めることを求めているものの、特定のけやきの木の伐採を禁じた規定といえない」「この木は保護樹木等に指定されていなかった」ことを論拠に、伐採は違法、不当ではないとしています。実際に樹齢200年に達する、都心では何本ともない巨木が、こうした理由で伐採止むなしと判断されたことをどうお考えになりますか?
中沢
 監査委員は、(I)文書をとりかわした期日の前日にけやきの木を伐ったことについては問題がある、(II)都市の緑の少ない現状の中で貴重な存在、という意見には同調する。特段の配慮が必要だったと考える
藤井
 正直言って、私はこの問題について真剣に考え、悩んだ。過密する人口を抱え、一刻の猶予も許されない住宅施策の推進は、財政難とはいえ、都の最重要課題ととらえ、私どもは取り組んでいる。今回、住宅を取るか、樹木を取るかのニ者択一を迫られ、やむを得ず住宅建設を選択せぎるを得なかったというのが、偽らざるところである。だからといって、樹木の保護など環境問題に配慮しなくていいとは決して思っていない。今回のことを教訓に今後の公共事業のあり方、樹木保護のあり方などについて検討してまいりたい
根本
 地方自冶法において監査委員は「公正普遍」な立場を求められています。その立場に立てば、知事の義務を定めた「自然保護条例」に違反している事は明らかな筈です。常に行政の言い分のみ認める監査要員に憤りを感じます。しかし、知事が任命する人事である以上、知事部局の擁護をする人事になる事は避けられません。監査委員の公選制など制度改革が必要です
大山
 監査委員は、今回の都営住宅建設計画の立案から伐採に至る都の一連の行為が、都と区の条例の趣旨にてらして適切なものであったのかどうか、より深めた判断をすべきであったと思います。そのような観点からみるならば、今回の都の行為に正当性は乏しいことは、監査結果のなかで「期限を待たず伐採を行なったことは適切とはいいがたい」と指摘し、「大けやきの伐採が違法・不当でないとしても、樹齢の長い巨樹は、都市において貴重なものであり今後とも、その取り扱いについて特段の配慮が望まれる」と述べていることからも明らかです。したがって、監査結果については納得しがたいと考えています
西川
 行政側の回答には疑問が残る。前例がない、事例がない、規定ではという杓子定規にはまった対応ではない判断を今後は行政側もしていくべき
とみた
 法令や条例の解釈の問題ではなく、地元住民の心と合意が尊重されるべきだと考えます




4)このけやきに代表される巨木は、木そのものに歴史的、文化的財産の価値があるばかりでなく、周辺の動植物を含めた「生態系の中心」としての存在価値がきわめて高いと考えられます。また、都営住宅の居住者だけでなく、近隣住民にも心の安らぎを与える存在であったことは確かです。このような観点から、今回の伐採をどう評価しますか?
中沢
 東京都の住宅局が担当したが、現場の声をもっと聞き、話し合う必要があった
藤井
 結論から申し上げれば、やむを得ないとはいえ、残せるものは残したかったというのが、偽らざる思い。設問で述べられた貴会の考え、思いには同感である。ただ、今回の伐採については、設問(2)〜(4)で回答した通りである
根本
 伐採は許せない事ですが、都営住宅敷地を公園化するなど、より開放的な施設にする必要があります
大山
 設問で述べられている趣旨に同感します。住民のみなさんの努力により、「移植可能」との専門家の判断が示されたのですから、都は移植の検討を真剣におこなうべきであったと考えます
西川
 きちんと調査し、4)通りなのであれば、けやきをいかした計画に変更すべきであったと思う
とみた
 2)3)のとおり、残念なことと思います




5)環境問題、都市の自然保護の重要性が日増しに高まっています。建替えの計画が始まった平成2年度と比較して、現在は自然保護に対する一層の配慮が必要であることは疑う余地はありません。このけやきの問題を含め、公共工事による自然破壊を防ぐために、事業者には計画を変更する努力義務があるとお考えになりますか?
中沢
 努力義務としてではなく姿勢として必要である。自然破壊を防ぐのは当然であり、計画を変更することは場合によって必要である。住民に指摘される前に先取の精神で、自然保護をふまえた公共事業にすべきだ。もし住民の声があがってくれば必要に応じて変更も必要だ
藤井
 計画変更ヘの努力義務は当然で、その時の状況を踏まえて、よりベ夕ーなものを求めるのは、当然の行為と考える。ただ、様々な考えにすべて対応できるものではない。事業の目的違成が最優先されるベきは当然である
根本
 努力義務があると考えますが、それ以前に、設計段階で自然保護に十分配慮した設計が求められていると思います
大山
 努力義務を課すべきだと考えます
西川
 一度決まった計画でもその時々に応じて計画の練り直しや変更をする決断も必要。世界的規模で環境意識が高まりを見せているのにもかかわらず、日本ではまだ環境に対する意識が低い。自然と調和したまちづくりを目指すのが21世紀の都市整備のあり方になるであろうから、当然事業者にはそれに配慮した対応が求められる
とみた
 地元の声をいかに反映させるかは事業者最大の努力義務と考えます




6)新宿区は、“新宿区みどりの条例”のいう保護樹木の指定は、公有地にあるものを除外してはいないといいながら、公有地の樹木は対象にしないとしています。今後、区内の公有地の(再)開発にあたって、その地にある巨木は保護すべきだとお考えですか?保護する場合、どのような形をとるのがよいとお考えですか?
中沢
 計画の段階から念頭に入れて根まわしができるような、長期で柔軟な発想が必要と考える
藤井
 保護すべきと考える。保護の仕方としては存続移植などがあるが、移植との結論が出れば、樹医など専門家の意見に基づいて実行きれることが、よりベターと考える
根本
 新宿区は基礎自治体であるという自覚に立ち、「みどりの条例」を改正し区内の全ての公有地について「保護樹木」を指定する権限を持ち保護すべきです
大山
 新宿区のみどりの条例は、「今あるみどりを保護し、新しいみどりを育成すること」を目的に掲げています。巨木に限らず、みどりの保護・育成が条例の基本的な立場だと思います。したがって、公有地の開発等にあたっても、その土地にある樹木を保護すべきことは当然だと思います。区が条例の保護樹木規定の運用にあたって公有地内の樹木を対象にしていないのは、公有地の管理をしている公共団体は自らの当然の責務として樹木等の保護をおこなうことを前提にしているからと伺っています。今回の出来事を教訓に、区も公有地内のみどりの保護について、保護樹木の対象にすることや条例に規定されている緑化計画書の審査をより厳格におこなうことなど、対策を強化すべきと思います
西川
 保護すべき。事業計画の見直しを含め情報公開をし、説明責任を果たした上で変更ができないか再検討をする必要がある。そこまでして変更が出来ないのであれば、巨木の移転を含めた対策で折り合いをつけてみてはどうか
とみた
 新宿区みどりの条例の成立趣旨から考えれば、公有地にもみどりの条例が適用されることは当然と考えます。そのことを明確にするために、条例の見直し作業が必要です




7) 朝日新聞5月22日朝刊の報道によると、新宿・渋谷など東京の繁華街の渋滞や事故の原因となっている業務用車両の路上駐車をなくすため、道路わきの植樹帯などを削って荷物の積み降ろし用駐車スペースを確保することにし、7月から順次実施したいとしています。植樹帯を削るのは止むを得ない措置なのか、他に方法がないのか、ご意見をお聞かせください。
中沢
 減った分の緑を他の場所で増す配慮が必要である
藤井
 詳しい情報を得たうえで、十分に検討し、対応を考えたい
根本
 渋滞や事故の解消は、道路の拡幅や路上の駐車スペースの拡張では解決しません。逆に、侵入車両が増え、渋滞は増します。一極集中の都市政策の是正、公共交通の整備などによって解消をはかるべきです
大山
 路上駐車の解消は、配達・荷さばきなどの駐車帯だけでなく、迷惑駐車の規制、さらには大規模建築物の荷さばき場の設置などの方法が考えられます。植樹帯の削減は極力避けるべきだと考えます
西川
 もともと違法駐車が多く、スペースがないのも原因の一つなのではないか。まずそちらの対策を講じた上で検討をする課題だと思う
とみた
 道路行政の中でも植樹帯の維持管理は重要であり、荷物の積み降ろし用駐車スペースの確保のために画一的に植樹帯を削ればいいというものではありません。その地域のまちづくりをどう進めるか、この課題も合意形成が重要だと考えます


 


 ※いくつかの関係者に発信したあとの16日に藤井雅義氏からご回答をいただきましたので、最後に参考意見として掲載いたしました。

参考意見 

※藤井雅義氏の回答
  私も新宿で産まれ育った人間として大けやきの伐採には心を痛めておりました。
  私の考えとしては、大けやきの伐採の問題を新宿という町だけの問題ではなく、もっと広く根本的な部分で考えて行かなくてはならないと感じております。
  自然環境を考えるとき、地球環境の破壊という観点から、色々なことを多面的に考えて行かなければならないと思っています。
  生きるために仕方なく環境を徹底的に破壊したり、人を殺したり殺されたりするのが当たり前のようなアジア・中近東・アフリカ・南米のいわゆる発展途上国を9ケ月間一人旅して日本にかえってきたとき、日本の政治家・役人の危機感の希薄さを改めて思い知らされました。
 今回の大けやきの伐採の問題についても、政治家・何もせずに給料をもらっているような役人の環境問題への危機感のなさから生まれてきているような気がしてなりません。
  例えば、環境問題の一つとしてゴミの問題を考えた場合、リサイクルにも限界があることは明らかで社会的システムとしてゴミを出さない工夫することの方が大事だと考えています。
  また一方で、心の問題として一本の木が切られたということが、問題なのではなく、それを生きるためにではなく、ただ平気で切ってしまう人間の心の荒廃が問題になるのではないのでしょうか。最近、実の子を虐待死させてしまう親や反対に実の親や何の関 係のない人までをも死に追いやる子供たちなど、目を覆いたくなる状況が続いております。
  つまり、今回の大けやきの伐採の問題につきましては、一つ東京都の問題ではなく、日本という国が富んではいますが、心も政治も行政も既に病んでしまっていることにあると考えます。そのような状況を都政から少しでも改善できればと、この度の立候補に至りました。

  



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