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設立総会案内状

大けやきでたいへんお世話になった皆様へ

         新しくみどりを考える会の発足設立総会ご案内


 大けやきが伐られた2月1日は、寒い冬の最中でしたが、近頃は桜もほころび始め春の到来を感じます。皆様いかがお過ごしでしょうか?

 「戸山団地の大けやきを考える会」「大けやきを守る会」と二つの会でやってまいりました新宿区百人町4丁目大けやき保存運動、伐採後の抗議行動へとご協力をいただきましてたいへんありがとうございました。
 私たちの歴史的・文化的財産だった、そして何よりも、その雄姿でみんなに親しまれてきた大けやきは残念ながら伐られてしまいました。でも、このことをきっかけに、私たちが気がついたこともたくさんありました。2月1日以前は、大けやきを残したい一念でしたが、伐採後は、都住宅局の暴挙に対する抗議とともに、行政が開発の名の下に2百年も生きてきた樹まで倒すのはおかしいではないか、もっと声を上げるべきだと。
 そして、東京都には<住民監査請求>を(結果は4月上旬に出る予定です)、新宿区には<みどりの条例に関する陳情書>を出しました(去る3月16日に審議が行なわれ、なんと採決は見送られました)。
 私たちは、大けやきをきっかけにして抱いたこの思いを、なんとか未来につなげていけないものかと考えました。そこで、大けやきの経験を活かし、私たちのみどりに対する思いをさらに拡げていこうと、二つの会を統合し新しい会を、来る4月1日に発足させることにしました(会の名称は、いくつかの案の中から当日皆様に選んでいただこうと思っています)。
 大けやきに関する行政への糾弾は続けていく予定でいますが、新しい会では、近隣地域のみどりの現状を調査・研究をしたり、みどりに触れ合ったり、巨樹・巨木を見にいったりといった様々な活動を企画し、一人でも多くの関心ある方々に参加していただけたらと考えています。また、同様な活動をしている人たちとのネットワークを創って情報を交換したりと、幅の広い活動ができたらと予定しています。
 手探りですが、ぜひ多くの皆様とご一緒に会の歩みを進めていければと思っています。つきましては、下記のように設立総会を開きますので、会員になるならないかに関わらず興味関心のある方のご参加をお待ちしております。

   3月24日
                 戸山団地の大けやきを考える会   植田 麻実
                                  春日 武夫
                 大けやきを守る会         石岡はるじ

                   記

 I 日時:4月1日(日)PM,3:00〜
 II 会場:第1・2部=新宿区消費者センター 4階第1会議室
            (JR高田馬場駅徒歩2分。高田馬場4-10-2 3365-6100)
      第3部=高田馬場駅近くのとある?級料亭
 III 当日の進行:第1部=大けやきの経過報告
      第2部=設立案の検討・承認
      第3部=懇親会(5時頃より終わるまで。実費をいただきます)



都営住宅の建替え工事に伴う大けやきの伐採に要する経費支出を違法・不当としてその返還を求める住民監査請求監査結果
                          東京都監査委員 矢部  一
                                  森田 安孝
                                  横山  樹
                                  藤原 房子

第1 請求の受付

 1 請求人 植田 麻実 外55名

 2 請求書の提出
   平成13年2月8日

 3 請求の内容
   《略》(2月8日提出の監査請求書=9,経緯その4の資料を参照)

 4 請求の要件審査
   本件の請求は、地方自治法第242条所定の要件を備えているものと認めた。

第2 監査の実施

 1 監査対象事項
   大けやきの伐採に要した経費支出を監査対象とした。

 2 監査対象局等
   住宅局を監査対象とした。また、新宿区に対し、関係人調査を行なった。

 3 請求人の証拠の提出および陳述
   平成13年3月6日に、新たな証拠の提出および陳述の機会を設けた。
   請求人は、陳述において、平成13年2月2日までは本件大けやきを伐採しないとの合意を無視し、住宅局が1日前に伐採をしたことは許されるものではない、などと主張をするとともに、新たな証拠として、本件大けやきの伐採が行なわれる前の樹木などの写真ほか7点を提出した。

第3 監査の結果

 本件請求については、合議により次のように決定した。
 本件請求は、理由がないものと認める。

 以下、事実関係の確認、監査対象局の説明および判断理由について述べる。

1 事実関係の確認
 (1) 本件大けやきが存在していた都営戸山アパートの建替えについて
   (建替えについての概要、および、建物概要) 《略》

 (2) 本件建替え工事に関する契約について
区 分契 約 期 間契 約 金 額
設計委託契約平成11年 8月20日から
平成12年 3月 7日まで
   70,875,000円
工事請負契約平成12年10月 5日から
平成14年11月29日まで
1,449,000,000円

 (3) 自然の保護と回復に関する都の条例について 《一部略》
    請求人が違法・不当の根拠として示している
  ア、都条例第4条(基本的責務)
    知事は、あらゆる施策を通じて、自然の保護と回復に最大の努力を払わなければならない。
  イ、第11条(公共事業における義務)
    知事は、道路、公園、港湾、公営住宅の建設など都の行なう公共事業の計画を定め、およびこれを実施するにあたっては、自然の保護と回復に十分配慮しなければならない。

 (4) みどりの保護と育成に関する新宿区の条例について 《一部略》
    請求人が違法・不当の根拠とするけやきの木に関する新宿区みどりの条例の規定。
  ア、第4条 第2項 事業者は、事業活動を行うに当たっては、みどりの保護と育成に努めるとともに、区が実施する施策に協力しなければならない。
  イ、第7条(区の木、花) 
  ウ、第11条(樹木などの保護及び回復)
  エ、第12条(保護樹木などの指定)
    第1項 区長は、樹木、樹林及び生垣のうち、特にみどりの文化財として保護する必要があると認めるもの(以下「保護樹木等」という)を規則で定める基準により指定することができる。
   みどりの条例施行規則第5条第1項、保護樹木の指定基準は「地上1.5mの高さにおける幹回りが1.2m以上」と定めてある。

 (5) 本件大けやきの概要について 
   《略》

2 監査対象局の説明
 (1) 本件建替工事区域の有効・高度利用の必要性について
  都営住宅は、公営住宅法(昭和26年法律第193号)等に基づき整備されるものであり、社会的なセーフティネットとして、低所得者、高齢者、障害者などの世帯の居住の安定を図る上で、大きな役割を果たしている。
  現在、都には約26万戸の部営住宅があり、この内、昭和20年代から昭和30年代にかけて建設された住宅には老朽化したものも多く、その更新が急務となっている。このため、現在、部営住宅の整備については、建替事業を中心に行っている。
  建替事業にあたっては、都民共有の財産である都営住宅敷地を有効に活用する観点から、立地にふさわしい敷地の有効・高度利用を図り、地域の活性化に資することとしており、本件建替工事区域についても、可能な限り、敷地の有効・高度利用に努める必要がある。

(2) 自然保護条例に基づく責務及び義務について
  自然保護条例において、知事は、公営住宅の建設などの都の公共事業の計画を定め、及びこれを実施するにあたっては、自然の保護と回復に十分配慮しなければならないときれている。
  住宅局は、その趣旨に沿って、都営住宅の建替えに当たり、可能な限り、既存樹木の保存や新しい樹木の植栽を行うことにより、団地の緑化に努めてきている。
  本件建替工事区域においても、この考え方を基本に取り組んでおり、このことは、自然保護条例の趣旨と一致するものと考えている。
  本件大けやきについては、以下の理由により、やむを得ず伐採したものである。
 ア 本件建替工事区域のような都心地域における建設計画は、最大限に敷地の有効、高度利用を図り、できる限り多くの住宅を供給する必要があり、本件大けやきの存在していた場所に建物を配置せざるをえなかったこと
 イ 本件大けやきの移植については、都が委嘱した樹木医の診断によリ「移植後数年は体力的に存続が可能であるが、その後の生存が殆ど望めないことが非常に高い確率と思われる。」という判断が示されたこと
 ウ また、同診断では、「現在の位置で移動することなく生存させることに、建物基礎工事や、風障害を除去しなくてはならず、非常に困難である。」との判断も示されていること

  以上のように、本件建替工事については、自然保護条例の趣旨に沿って、計画し施行しているものであり、やむを得ず、本件建替工事に伴い本件大けやきを 伐採したとし ても、自然保護条例に違反するとはいえない。

(3)新宿区みどりの条例に基づく保護樹木等の保存について
  本件大けやきは、新宿区みどりの条例に基づく、保護樹木等に指定されていなかった。
 また、仮に、本件大けやきが同区の保護樹木等に指定されていたとしても、新宿区みどりの条例第11条において「(土地の所有者又は管理者は、)やむを得ず除去するときは、(以下略)」と規定しており、保護樹木等の伐採を禁じているものではない。 
  したがって、本件大けやきは新宿区長の保護樹木等の指定を受けていない通常の樹木であリ、これを伐採したことが新宿区みどりの条例違反となるものではない。

(4) 本件建替計画における近隣住民との話合い等の経緯について
  本件建替工事に関する近隣住民ヘの説明会及び本件大けやきに関する近隣住民との話し合い等は、平成11年7月23日に建替計画説明会を開催して以来、数回実施している。その際に本件大けやきを伐採する方針であることを説明してきており。概ね住民の合意も得られたと考えていたが、平成12年12月18日に本件大けやきの伐採に反対する旨の要請文が郵送された。
  そこで、この要請を受け、反対する住民と話し合いを開始した。その経緯の概要は次のとおりである。

 ア 本件大けやきの伐採に反対する住民の要請を受け、平成12年12月21日に住民との話し合いを持ち、現存位置に本件大けやきを残すことはできないので、移植を行った場合、本件大けやきが移植に耐えられるかどうかについて、樹木医の診断を行った上で、その是非を決めることとなった。
 イ 平成13年1月6日に現場において、都関係者のほかに、伐採に反対する住民及び住民が依頼した樹木医も立ち会って、都が依頼した樹木医により診断を行い、同樹木医の診断結果の説明を受けた。
   同樹木医の診断結果は、「移植についてを慎重に検討した結果、物理的には、万難を排し可能とすることができるが、生理的には、非常に困難である。移植後数年は体カ的に生存が可能であるが、その後の生存が殆ど望めないことが非常に高い確率と思われる。」というものであった。
   この時点で、住民の多くは、伐採もやむを得ないとの意見であったが、再度話し合うこととした。
 ウ 住宅局は、1月16日の住民との話し合いで、@新宿区百人町四丁目部営住宅敷地内での本件大けやきの移植ばしない、同月19日までに移植受け入れ先が見つからなければ、 伐採する、A移植の条件としては、伐採に反対する住民が本件大けやきを 移植させることができる業者を見つけること、B移植費用も都民に納得を得られる費用であること、という考え方を示した。

 エ 伐採に反対する住民側は、結局、移植先を見つけることができず、1月19日の期限までに上記の条件が満たされなかったことから、住宅局は、本件大けやきを伐採する旨を、同月22日付けで住民の代表者に通知した。これにより、本件大けやきの伐採について住民の納得が得られ、その翌日に住民も参加して、工事の施工業者が「お祓い」を行った。
 オ 1月25日に伐採作業を開始したところ、伐採に反対する住民が、作業現場において作業員の梯子に詰め寄る等の行動をとったので、危険と判断し、作業を中断した。この際、現場に居合わせた住宅局の東部住宅建設事務所所長と住民との問で話し合いが行われ、同所長は文書により次のような確認を行った。
 (ア) 都は、敷地内の移植を検討し、1月26日までに返答する。
 (イ) 都の返答によっては、住民は2月2日までに、他の樹木医の診断を求め再度話し合う。それまでは、伐採は行わない。
 カ 上記(ア)については、1月25日中に、同所長から住民の代表者に「都としては、伐採する方針であること。」を伝えた。
   その後、2月1日に住民側から、樹木医の診断に代わるものとして、樹木医の資格のない者のレポートが提出された。住宅局としては、その際に、住民側に対して樹木医の診断でないことを確認したが、同日夕刻までに他の樹木医の現地立ち入りの申し出もないことから、期日までに樹木医による診断書の提出は困難と判断し、住民の代表者に「提出きれたレポー卜は、樹木医の資格を有していない者の診断であり、採用できない。」旨を告げ、伐採工事を再開し、本件大けやきを伐採した。

  以上のことから、本件大けやきの伐採に関する設計、工事の施行及びこれらに要する 経費支出は適法であると考える。
                         
3 判  断                      
  以上のような事実関係及び監査対象局の説明に基づき、本件請求について、次のように判断する。
  本件請求において請求人は、本件大けやきの伐採に要した経費支出を違法・不当と主張して、当該経費に相当する額の損害補てん等を求めているものである。
  また、請求人が本件大けやきの伐採を違法・不当とする理由を整理すると、次のとおりとなる。
 ア 自然保護条例第4条及び第11条の規定に違反していること
 イ 新宿区みどりの条例の規定に違反していること
 ウ 平成13年2月2日までは本件大けやきを伐採しないとする住民との合意に反して、その前日に伐採を行ったこと

そこで、以下、このことについて判断する。

 (1) 自然保護条例に規定する知事の基本責務等について
   請求人は、本件大けやきの伐採が自然保護条例第4条及び第11条の規定に違反していると主張しているが、第4条の規定は、行政上の運営方針としての理念規定である。また、第11条の規定は、都営住宅等を建設する場合を含め、知事に計画段階から自然の保護と回復に十分配慮するよウ求めた規定である。
   よって、両条項の規定は、いずれも具体的な義務を課したり、規制をするものではないことから、本件大けやキの伐採が自然保護条例に違反するものではない。
   さらに、自然保護条例のその他の条項について確認したところ、本件大けやきのような特定の樹木を保護し保存すべき規定はないことが認められた。
   したがって、本件大けやきの伐採が自然保護条例第4条及び第11条に違反するという請求人の主張は認められない。
 (2) 新宿区みどりの条例に基づく保護樹木等の保存について
   新宿区みどりの条例第7条では、区の木として「けやきの木」を指定している。
   しかしながら、同規定は、けやきの木を新宿区の木とし、区のみどりの象徴として、事業者等に保護と育成に努めることを求めているものの、特定のけやきの木の伐採を禁じた規定とはいえず、本件大けやきの伐採が同条項に違反するとはいえない。
   また、新宿区みどりの条例第12条第1項では、区長は、樹木等のうち、特にみどりの文化財として保護する必要があると認めるものは、保護樹木等として指定することがでキるとしている。
   本件大けやきについて、新宿区長が保護樹木等に指定していたか否かを、新宿区に対する関係人調査によリ確認したところ、指定した事実はないことが認められた。
   したがって、本件大けやきの伐採が、新宿区みどりの条例に違反するという請求人の主張は認められない。

 (3) 住民との合意に反して、その前日に伐採を行ったことの適否について
   本件大けやきの伐採に至った経緯を確認したところ、次の事実が認められた。
  ア 監査対象局と本件大けやきの伐採に関係する住民とは、本件大けやきの移植の可能性等についての話し合いがもたれ、その結果、少なくとも平成13年1月23日には合意が得られ、同月2 25日の伐採工事に至ったこと
  イ 上記伐採工事を開始する際に、本件大けやきの伐採中止を求める住民の行動があったことから、工事を中断し、住民と東部住宅建設事務所長との間で話し合いが行われ、「住民は2月2日までに、他の樹木医の診断を求め、再度話合いを行うそれまでは伐採しない。」趣旨の文書を取り交わしたこと
  ウ 監査対象局は、2月2日を待たず。その前夜に本件大けやきを伐採したこと

  このことについて、監査対象局は、「2月1日に住民側から、樹木医の診断代わるものとして、樹木医の資格のない者のレポートが提出された。住宅局としては、その際に、住民側に対して樹木医の診断でないことを確認したが、同日夕刻までに他の樹木医の現地立ち入りの申し出もないことから、期日までに樹木医による診断書の提出は困難と判断し、住民の代表者に「提出されたレポート は、樹木医の資格を有していない者の診断であり、採用できない、」旨を告げ、伐採工事を再開し、本件大けやきを伐採した。」と説明している。
  しかしながら、2月2日までは伐採しないとの文書を取り交わした以上、その趣旨は尊重すベきであり、期限を待たずに伐採を行ったことは適切とはいい難い。
  ただし、本件大けやきの取扱いについての話し台いの経緯や、樹木医による「生理的にはその場での存置や移植が困難である。」との診断結果等を考慮すれば、本件大けやきの伐採が直ちに行われたとしても、違法・不当とまではいうことはできない。
  したがって、本年2月2日までは本件大けやきを伐採しないとする住民との合意に反して、その前日に伐採を行ったことを違法・不当とする請求人の主張は認められない。
  よって、本件大けやきの伐採に要した経費支出を違法・不当として、当該経費に相当する額の損害補てん等を求める請求人の主張には、理由がないものと認める。

 なお、本件大けやきの伐採が違法・不当ではないとしても、樹齢の長い巨樹は、都市において貴重なものであり、今後とも、その取扱いについて特段の配慮が望まれる。





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