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☆会報「大けやき」Vol.3  (2001年11月25日発行)






【平成13年(行ウ)第103号損害賠償代位請求事件】報告・第三回口頭弁論
再び都は伐採理由明瞭にできず

 第3回口頭弁論が10月29日に開かれました。担当の裁判長が10月3日に小田急の高架化の事業認可取り消し判決を出しているただけに、期待をして臨みました。
 前回、裁判長から被告側への指示は、なぜ伐採しなければならなかったか、及び伐採費用を明らかにすることでした。原告は請求の対象をはっきりするように求められていました。この指示を受け、私たちは被告があまりにも事実関係を無視した言い訳を繰り返しているので、開示請求した文書で確認した建替え計画の当初から、伐採の計画の対して急ぎ保存を要望したにもかかわらず伐採が強行されたまでを、順を追って整理し、証拠文書も揃えました。それらを「住宅局長は事業決定権者の立場にあるのだから被告戸井の当該職員としての責任は免れない」という反論に加えて、原告準備書面^としてまとめて、20日に裁判所に送付しました。細かいことはともかく、こちらの手の内の大半を出したことになります。
 被告側より文書が届いたのは、ぎりぎりの25日で、それも準備書面はなく、それに代わるものとして東部住宅建設事務所・渡部前所長の陳述書、建設中の団地配置図、樹木医の大けやき診断報告書、驚いたのが、伐採後に切り刻まれた大けやきの写真と、それを診断した樹木医の報告書(続)でした。伐採費用は、工事請負契約の支払いがまだのため提出できないということ。まったくこの程度のものしか出せないのかという感じです。
 渡部陳述書は「一般的に(略)既存の樹木を残すことを前提に建替え計画を立てることは、非常に困難」とし、日照を考え、道路の拡幅もあり、今建設中の建物配置図しか、妥当な案は考えられないといいたいようです。しかし、平成5年の「基本計画報告書」でさえ、建物のいくつかの配置と高低の案が示されているのだから、伐採理由の説明にはなりません。しかも、私たちが問題にしている「計画から設計の過程で、どのように『都自然保護条例』に配慮したか」という点にはいっさい触れられていませえん(配慮しなかったからでしょう)、その上、伐採の大きな理由として「樹木医の診断が移植は困難とした」ことを挙げ、なおかつ伐採後を診ると、根茎が小さい、腐朽が大きいので「本件けやきを伐採したことは、結果として、倒木の倒壊事故などが発生する危険を回避できた」と結論づけています。殺しておいて、どうせ長生できなかったのだから、といっているようなもので不愉快です。そもそも移植が困難なのは根を伐らざるをえないことが大きいと彼らは説明していたのだから、根茎が小さければ伐らずに移植できたはず。とにかく今回提出された文書には、そのような疑問にはなにも答えていない一方的な言い分が多くみられます。
 なお樹木医を「国の新しい制度」といって堀報告書を「樹木医でない一個人のものだから」と葬っていますが、樹木医制度は、堀さん等が中心となって(財)日本緑化センターの事業として始めたもので国家資格ではありません。にもかかわらず樹木医でなければという理由は何か、公開質問状で問いかけても回答がないまま、都は伐採の一番のキーポイントだとしています。
 裁判長は再度、これでは伐採の理由を説明するには乏しいとし、その他の設計や方法がなかったのか、さらなる理由を「工夫をして」とまで付け加え、具体的で納得できるようなものを提出するよう、被告側に指示をしたのでした。(春日武夫・大けやきの会代表) 


【公判エッセィ】
住民訴訟制度の改正に思うこと   中田太郎

 あまりお力になれていない私が申し上げるのも心苦しいのですが、実際に原告の立場で住民訴訟に参加してみると、まさに「習うより、やってみろ」」。この制度を定める地方自治法にも興味を深くしました。法学部生のころは退屈だった「行政法」も、提訴してみて初めて「生きた」法に感じられました。それだけに近く審議されるであろう地方自治法の改正案には無関心ではいられません。
 改正案の中心は(ここから先は私たちの場合に当てはめたかたちで書きます)、監査請求の決定に不服な住民たる私たちが、現在石原知事と戸井住宅局長を相手どり、東京都に対して損害賠償するよう求めているのに対して、まず東京都を相手に提訴し、違法があったと認められれば、次いで東京都が石原都知事と戸井住宅局長に損害賠償を請求する二段構えにしようとするものです。もし改正案が可決されたなら、私たちは石原、戸井両氏個人の責任を問うことができなくなります。実際には改正前に提訴された訴訟については経過の措置がとられ、すぐに被告を変更させられることがないと思いますが、これが可決されてしまうと事実上住民訴訟制度は骨抜きにされ、住民による行政の監視機能は著しく弱められてしまいます。まあ、それが成立を目論む行政の狙いでしょうが。
 改正案に多々問題がありますが、一点申し上げます。それは違法な伐採に伴い、本来不要な公金が支出されたことによって損害を受けたのは誰か、ということです。都の行政が私たちの税金によってまかなわれている以上、最終的には納税者たる都民でしょう。しかし第一義的にはまさに東京都(の財政)が損害を受けたのです。私たちが損害を受けた東京都をどうして訴えなければならないのでしょう。私たちが問うているのは直接的には戸井住宅局長、首長としては石原都知事の公金支出の前提たるべき政策判断の違法性の有無なのです。機関である東京都は、被損害者と言えこそすれ、被告とすべき論拠はなにもありません。
 ところで10月3日、東京地裁において、小田急線の高架化工事にともなう沿線住民による事業認可処分の取り消しが認められました。この判決を下したのは、誰あろう私たちの提訴を判断する藤井裁判長にほかなりません。この判決を原告・弁護団は「歴史的意義ははかりしれない英断快挙」と絶賛しています。私は大いに勇気付けられたと同時に、だからこそ藤井裁判長を納得せしめる論理の構成に「せめてない知恵をしぼりたいものだ」と思いました。

国立国際療養センターのけやき

【巨樹のある風景】 第三回
国立国際療養センターのけやき

 戸山ハイツとの間、箱根山通り沿いにある、幹回りほぼ5m、新宿区内最大のけやきです。
 以前は昭和4年に創設された陸軍東京第一衛戌病院。「子供の頃、年に一回許可証を得た者だけが入ることができ、プールで泳いだのを覚えてます」と地元のお年寄りの話。そして、けやきが「20年位前に箱根山通りができ、コンクリートで囲まれてからすっかり弱って、枯れてしまわないかと心配している」とも。


【人と木の物語に出会う】 この一冊
『木に会う』  高田 宏著 新潮社(1989年)

 木に会うことは人に会うこと、人に会うことは自分に出会うこと。縄文杉と山尾三省に始まり、タゴールの詩「静かにわが心よ、これらの大きな樹木たちは祈祷者なのだ」を引用しながら、深く自分の心に生きるとは?と問いかけてます。木場の材木商故長谷川萬治氏が、自宅の内装を全部好きなけやき造りにしたという話も。けやきには人を魅了してやまない何かが潜んでいるのかも。(春日秀子)

【東京いきもの図鑑】第三回
ケムシ(3)       文・イラスト 横関拓也

 ケムシにさわるとかぶれる! と思っている方が多いでしょうが、かぶれないケムシもいます。その代表? とも言えるのがオビカレハ。ウメケムシとも呼ばれウメにつきます。青系のマダラの色で、白く長い毛。頭に鬼のような面をつけてコワイ顔していますが、これらはすべて見かけ倒しで全然かぶれません。なぜそれを知ったかと言えば触ったからです。頬ずりとかしたわけではないので弱い肌だったらかぶれるのかもしれないけど〜。一般的にかぶれるケムシというのはドギツイ色で毛は剛毛で強そうです。こういうのに触ると刺すような激痛にやられます。ちなみに前回登場したアメリカシロヒトリもかぶれません。
 オビカレハがかぶれないと知ってから、私は彼らをいいように虐殺してしまいました。害虫のケムシ、しかも弱いとくれば、もういじめの対象というやつです。土に埋めたり、川に流したり、犬のエサに混ぜたりとヒドイことしたね…。




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