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☆会報「大けやき」Vol.8  (2001/08/26発行)



9月17日最終弁論へ。判決間近  第8回口頭弁論報告

 前号において、7月16日が最終弁論となるかもしれないとお知らせしましたが、裁判長は、改めて9月17日をもって最終にすると明言しました。もう一度弁論の機会が与えられることになったわけです。
 これまで私たちは、大けやき伐採に至る行為は「都自然保護条例」等に違背してると主張、その証明に努めてきましたが、被告は、違背してないといいながら具体的、論理的な裏付けを示していません。まさに糠に釘というか、拍子抜け状態で、もう反論することも特にないようです。したがって、原告としては、住宅局の自然保護に対する認識のなさ、人が住むことを忘れたようなその時々のご都合で変わる住宅政策を明らかにするとともに、自分たちの素朴な想いを整理して締めくくろうかと考えています。
 今回は、被告準備書面`及び、参加人都知事代理人からの第2準備書面が提出されました。前回の原告準備書面aにおいて「新宿区は大けやきの存在を認識しないまま対応が遅れ伐採直前になって都に移植の要請や保存の期待をした」と述べました。裁判長は、それへの都側の対応、反論は?と促していたのでしたが、二つの書面はその答えとなっているとは思えません。
 被告準備書面の方は、大けやきの伐採費用及び全体の工事費についての記載しかありません。損害賠償請求の費用認定を考えただけのもので、開き直ったような感じです。一方参加人のそれは、新宿区は大けやきを認識していたと主張してます。それは、事業決定前の昭和62年の「基本計画策定調査報告書」に、新宿区都市整備部長、外一名が参加してるから、というものです。15年前の調査に参加したのはまちがないでしょう。しかし、その後計画が具体的になっていく過程で、都は新宿区に相談をしたのでしょうか。「東京都は、本件都営住宅建設計画を立案遂行する過程で、本件ケヤキ伐採を含めた内容を予め示し上で、新宿区から意見を聴取」としながら、いつどのように区に示したかの記述も証拠もいっさい出していません。「大けやき」をと示した事実がないからでしょう。住宅局、東部住宅建設事務所内でも、まともに検討されたとも思えません。原告がどんなに要求しても、いつどうして伐採という結果になったかも明確にしていません。要するに、意見を聴取するため区に具体的に示したものは、後にも先にも既に大けやきの影も形もない平成10年の基本設計図だけでしょう。
 先日、大けやきのあった地区に隣接し引き続き建替えが行われる地区の、建替え計画説明会がありました。予定戸数304戸のうち150戸が1DKというのにも驚きましたが、東部住宅建設事務所開発課職員の住民に対する態度にも驚きました。「意見を聞きに来たのではない」「都民が選んだ都知事、議員が決めたこと。反対意見など聞く耳を持たない」と職員が発言したのです。大変不愉快でした。当初あった基本計画からも大きくずれてる設計図を、住民と相談なしにつくりあげ、説明責任も果たさないにもかかわらず、文句はいうなという姿勢なのです。建替え後の住民の生活がどんなものになるかの想像する力も意志もなく、ただ決まりだからと押しつけるやり方そのものが一番の問題のようです。 
 説明会では出されなかった植栽計画案もみましたが、前回と比べれば、きちんと調査もしているようですし、既存樹木を生かそうとはしてるようですが…。(春日武夫・大けやきの会代表)


エッセイ
北欧を旅して   小泉 洋子

 六月初旬にスウェーデンのストックホルム、フィンランドのヘルシンキ、ノルウェーのオスロ、デンマークのコペンハーゲンと、北欧各国の首都を訪ねてきました。
 どこの国でも、古い建築物が大切にされていて、街にはきらぴやかなネオンも自動販売機も無く、森の樹木は子から子を育み続けています。
 そして、もっとも驚かされたことは、人々は地球環境を守ることが先進国の役目だと自覚して、その環境づくりに一生懸命に参加していることでした。
 たとえば、かつてナポレオンやナチの侵略に対して、戦わずして降伏することで守った伝統ある建築物がいまも残っているのですが、人々はそれらを修復する技術を磨くことに誇りを持っています。
 街にはコンテナの様なゴミ箱が設置されているのでカラスが食い荒らすこともありません。ヘルシンキでは古着をいれる箱も設置されていて、難民やアフガンへの支援に役立てられています。条件は洗濯してあること…。
 こうした細かい配慮がされているのは、議会では女性議員が半数を超えているからなのかもしれません。議員の3分の2は別の職業を持ち、 会議が開かれる午後4時〜10時までの時間給で議員活動をしているのです。年齢は10代〜70代の幅広い層で運営されています。
 ただし、どこの都市でも税金はかなり高め、とはいっても病院や学校が無料ですから、所得の格差による差別はありません。子どもたちは「社会の子」として育てられているので明るく伸び伸びしています。遊び場も日本のようにお金はかからないので、友達との交流を大切にしているようです。
 面白かったのは、コペンハーゲンの人魚のある公園に、噴水として造られた、弟子たちを牛にして働かせたという女神像にまつわるエピソードでした。じつは、その噴水が壊れたまま長い間放置されているのです。なんでも、何億という修復費を出そうという富豪が名乗り出たにもかかわらず、噴水に水を流すのは税金と資源の無駄遣いだと、断ってしまったのだそうです。 
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 物が溢れた日本では、どれほど資源を無駄にしているでしょう。自動販売機に使用される電力は原発2基分といわれます。空缶はあちこちに捨てられ、新幹線や高速道路の普及で何処に行っても高層建築が軒をつらね、イルミネーションや人工的な噴水に飾られて、地方の良き街並みがどんどん消えつつあります。
 北欧では観光地より、人々の生活を大切にしている行政のあり方にとても感動しました。
 そして「大けやきの会」の活動の大切さを改めて認識させられる旅でした。


【巨樹のある風景】 第8回
諏訪神社の大けやき (高田馬場一丁目)

 明治通りとの交差点から100mほど駅よりの 諏訪通り沿いにある。普段一般の人が入れない社務所横にあり、接している歩道が2mほど切り下げられてるので、幹回りが3.4m強もあるような巨木と気がつきにくいようだ。歩道側の根は強制的に下に向けられ、その手入れを専門家に頼まねばならないし、維持が大変だと宮司さんが話していた。ツタがからまっているが樹勢はいいようだ。


人と木の物語に出会う この一冊
『もの食う人びと』 辺見 庸著 (共同通信社刊)

 世界の人々は何は食べ、どのように飢えているかを綴った本ですが、この中の一節『菩提樹の香る村』にも人と木と食べ物の話があります。足を踏み入れたとたん菩提樹の花の香り漂うクロアチア。ユーゴの攻撃で廃墟となった村にたった一人住むアナおばあちゃんは、涙の混じったヌードルをこねて著者に勧めます。青空、菩提樹の並木、丘にはセルビアの旗。切なくなります。(春日秀子)


判決日には結集しよう

 「大けやき」も一周忌。時とともに会員の思いも薄れたように感じざるをえない。このままでは正に「伐採しておけば住民運動もなくなる」と予想したとの思う壺だ。初心に戻り、マスコミを使って外部にアピールし、第二審を見据えた継続的な運動が必要だ。判決日は傍聴席を会員で埋め尽くせ!(石岡春二)




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