平成13年2月13日
春日 武夫 様
東京都東部住宅建設事務所長
渡 部 景 之
都営住宅百人町四丁目工事に関わるけやきについて
標記の件について、本年2月5日付の住宅局長宛及び東部住宅建設事務所長宛の質問状並びに2月6日付(2月7日収受)の住宅局長宛質問状に対し、以下のとおり回答致します。
記
都におきましては、都営住宅の建替え等に当たり、緑の保護に努めており、本団地に在する樹木につきましても、可能な限り残すこととしておりますが、当該けやきにつきましては、移植等は困難と判断したところです。
一方、都営住宅の建設に際しては、都民の貴重な財産である都有地の有効利用を図る必要があり、とりわけ本件団地につきましては、ほとんどが昭和20年代に建設した住宅であり、浴室もなく、老朽化が著しいため、多くの住民の方々が早期建替えを望んでいます。
こうしたことから、昨年末の住宅説明会でも、出席者のほとんどの方が、当該けやきを伐採し、早期に建替工事を進めるよう主張しておられたことはご存じのとおりです。しかし、都と致しましては、伐採反対の少数意見も可能な限り尊重し、また、1月6日には、双方からそれぞれ樹木の診断等を行う専門家である樹木医(農林水産大臣認定)をお招きするなどして、話合いを重ねてまいりました。
1月16日の話合いでは、「19日までに伐採に反対する方が移植受入れ先を見つけられない場合は伐採すること、移植の条件として、伐採に反対する方が移植できる業者を見つけ、移植費用も都民の納得の得られる費用であること」を確認しました。
しかしながら、これらの条件はいずれも果たされず、一方、都は、専門家である樹木医の判断を求め、移植しても生存がほとんど望めない旨の診断書をいただき、最終的に伐採やむなしとの結論に達しました。
23日には。工事施工業者が現地で行った「御祓い」に際し、御令室様や植田様も参加され、伐採に納得する発言をされたと理解しております。
その上で、25日に伐採することとしておりましたが、当日になって、伐採反対の方が現場に乱入するなどして、伐採を妨害したため、危険防止の観点から、現場で貴殿や植田様たちと私とで話し合い。2月2日までに植田様から、移植が可能であるとの「他の樹木医の診断書」を提出していただくことを条件に、伐採を一時猶予することとしたものです。
2月1日、お約束の診断書に代わるものとして、植田様ほかから掘大才様のレポートをいただきましたが、都としては、お約束の「樹木医の診断書」をいただけなかったこと、現地立入りの申出もなく、他の樹木医の新たな診断書の提出は事実上無理であること、から2月2日までにお約束の「他の樹木医からの診断書」の提出されないものと判断いたしました。
そこで、同日午後5時頃、私から植田様に都の方針について連絡し、「留守番電話」にメッセージを入れさせていただくとともに、御令室様に電話で同内容のご連絡をし、その上で、午後5時すぎ、伐採に着手致しました。
このように、建設促進を待ちわびる住民の方々が多い中、2度にわたり、伐採を見合わせたにもかかわらず、いずれもお約束の条件が果たされなかったため、都としては、最終的に伐採に踏み切った次第です。
なお、伐採後の木の断面を見ますと、事前に予想していた以上に腐朽が進み、大枝の分岐している部分では、大きな加重がかかると枝が折れる恐れのあるという、危険な状態であったことがわかりました。
以上、よろしくご理解いただきますよう、お願い申し上げます。
平成13年2月8日
東京都監査委員 殿
都営住宅戸山団地の建替工事における大けやき伐採に係る
東京都知事及び本件財務会計責任者に対する措置請求
標記の件につきまして、下記書類を提出いたしますのでよろしくご査収ください。
提出書類一覧
1. 東京都知事及び本件財務会計責任者に対する措置請求
2. 請求者名簿
3. 資料1ー東京都における自然の保珠と回復に関する条例の抜粋
4. 資料2ー新宿区みどりの条例の抜粋
※送付先、期限について記載された送り状は割愛します
樹木医に対する公開質問状
To::樹木医 有田和實殿
CC:東京都知事 石原慎太郎殿、東京都住宅局長 戸井昌蔵殿、報道各社様
From:戸山団地の大ケヤキを考える会 代表:植田麻実
連絡先:春日武夫 住所:(省略) 電話:(省略)
貴下の診断書は、新宿区百人町4丁目の都営住宅建設予定地内にある大ケヤキについて、1月6日に行われた調査に基づき、移植は「生理的には、非常に困難である。移植後数年間は体力的に生存が可能であるが、その後の生存が殆ど望めないことが非常に高い確率と思われる」と結論づけています。
東京都は、この診断書によって、移植後の生存はほぼ不可能であることが<科学的>に証明されたと認められるので、移植は行わないと結論づけました。
これに対して、市民グループなどで独自にお願いした日本緑化センターの堀大才氏が1月29日に同ケヤキを調査したレポートは、対照的な結論を述べているように見えます。
堀氏は問題点を述べた上で、「その程度であれば筆者のこれまでの経験からは生理的に十分可能であり、全体の状況から判断しても移植可能と考えられる」かつ、「移植か伐採かの二者択一を迫られるのであれば、筆者は移植の方を推奨する」と述べています。
ところが東京都は2月1日、堀氏が樹木医資格を持たないことを理由にこの診断書を棄却し、同時に、事前通告もなしに即日伐採に踏み切りました。
もし科学的、客観的判断が重視されるのであればこれは妥当な措置ではないと考えます。
むしろ重要なのは、二者の見解の異同を明らかにし、結論の妥当性を評価し直すことであったでしょう。
こういった過ちを二度と繰り返さないために、樹木医である貴下が以下の質問にお答えになり、今後、市民と行政が生産的な議論を構築していくための基礎づくりに貢献されることを切望します。
1.東京都は貴下の診断もって、「ケヤキが移植に耐えられない、つまり移植後根付くことはほぼあり得ないことが科学的に証明された」のだと説明しています。
この東京都による解釈に同意されるか、あるいは御自身の診断は移植成功の可能性を否定するものではないとお考えか、見解をご説明ください。
2.もし、東京都の解釈に同意するならば、堀大才氏の診断との異同をご説明ください。
また貴下の判定のほうが確度が高いとするならば、その根拠や堀氏の診断の問題点をご説明ください。
また東京都は堀氏の診断を、専門家としての適格無しとして棄却しましたが、堀氏の診断の科学的妥当性についても見解をお示しいただき、東京都による棄却の妥当性についてお考えをお聞かせください。
3.もし、東京都の解釈に同意しないならば、樹の移植が成功するかどうかについて、どのようにお考えかご説明ください。
特に、当該の樹の移植が、過去行われた同規模の移植と比較して、どのような点で困難が予測されるかご説明ください。
4.御自身の専門家としての見解をお伺いします。
当該の樹の移植は行われるべきだったでしょうか、あるいはそれは無駄な努力なのでしょうか?