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新宿区百人町4丁目の大けやき伐採をめぐる問題



文責: 春日武夫

10  経緯 その6《2/20〜4/15》


◎2月25日(日)
  新宿区新聞に記事。『巨木伐採の真相』とあり、伐採にいたる経過と、その後の2月5日の住宅局長宛の質問状およびその回答などが、伐採されたケヤキの写真ととも。

◎3月2日(金)
  夜、集まりをもつ。
  2月8日提出の住民監査請求の意見陳述の機会が3月6日に決定。その準備を。
  新宿区議会へ“新宿区みどりの条例に関する陳情”書を提出することでまとまり署名簿などを用意。定例区議会が開催中なので、これも6日都庁での意見陳述終了後に新宿区役所へ回り提出することにする。
  <戸山団地の大けやきを考える会><大けやきを守る会>をまとめ、都市を中心とした樹木、緑を考える会として多くの人に呼び掛けられるような会にしようと話し合いをすすめているが、新しい会の詳しい要項は後日。

◎3月6日(火)
  10:00〜11:30、都庁にて住民監査請求の意見陳述。陳述人は植田、春日、石岡の3名。傍聴人として参加9名。
  まず植田が、大けやきが歴史的・文化的に見てもたいせつな樹であることを説明し、“緑の東京計画”でいう風格都市を目指すのなら大けやきは残すべきだいじな樹であると。続いて団地住民である春日が、緑豊かな団地が建替え工事によってそれがいかに破壊されていったかを写真を示して証明し、最後に石岡が、自然の保護を知事の義務とした都の“東京における自然の保護と回復に関する条例”に違反し、大けやきの保護をしなかった設計の費用および伐採の費用は不当支出であると結論する。
  陳述終了後新宿区役所へ。新宿区議会事務局に陳情書“新宿区みどりの条例に関する陳情”を提出。その前に区議会議員の各会派を訪問、趣旨を説明しお願いをする。
  今回公有地にあるということで“区みどりの条例第12条”の保護樹木として指定されていたなら、設計段階で東京都住宅局とも話し合いができて残せたはずである。12条は公有地にある樹木を除外するものでなく、運用の問題であるとする陳情である。

 ※『新宿区みどりの条例に関する陳情書』内容
 《要旨》新宿区みどりの条例第12条「保護樹木の指定」運用にあたっては、国および地方公共団体が所有または管理する公有地にある樹木等も保護できるようにその対象にしてください。
 《理由》(概略)1、設計段階で十分配慮されていたなら大けやきを残した設計が可能だったと思う。
  2、区のみどりの条例は、幹回り1,2m以上の樹木を保護樹木として指定できると 規定されているが、2,7mの大けやきは公有地にあったということで指定されてい なかった。巨木・古木を保護するのは公共団体も含めた、我々全体の義務である。
  3、区は、大けやきの存在を掌握していなかった。保護すべき樹木を全て掌握し、公有地ないにある守られるべき樹木に関しても、保護樹木と指定できるような条例の運用を。

◎3月13日(火)
  宇都宮し栃木総合文化センターにおいて開催された林野庁、環境省、文化庁などが後援する『巨樹・巨木の国際シンポジウム』に、中田、根本、春日が参加。開会前に[樹齢200年の大ケヤキの命を夜に紛れて断ってしまった東京都の抗議する]というチラシを参加者に手渡す。

◎3月16日(金)
  新宿区議会環境建設委員会にて、提出した陳情書の審議があるということで、植田、石岡、中村、春日が傍聴に。
  委員11人中、田中(共産)、山田(社会)、松川(一粒会)の3人が質問をし、みどり公園課横田課長が答えるという形で進む。横田課長の答弁には思わず傍聴席から失笑が出るほど理に適わないことが多かった。
  「条例の趣旨を尊重すれば、保護樹木の制度は公有地も含まれるはずなのになぜ指定しないのか、先日のみどり推進審議会でも、よもやあのように伐られかたをするとはと話題になったがという質問」に対して、課長は、「大けやきの件は都がやってくれるものと思っていた」が、「新宿区みどりの条例12条は、公有地を除外するものでないとしながら、今後も公有地内のものを保護樹木に指定するつもりはない」と明言した。なぜ指定しないか、その理由に唖然となる。「指定してもなかなか守られないし、伐るなという拘束力も条例にはない。また都市は更新が進むのでそれを制約するようなことになっても困るし、公共の福祉に反することになる」とまでいうのだ。保護樹木として開発の邪魔をしてはいけませんというのであるなら、《地域の貴重なみどりを守り、新しいみどりを育む》(『新宿区みどり基本計画』より)はずのいた<みどり公園課>とはいったい何をするところなのか、何の拘束力をもたないような条例は何のために制定されたのか? よくわからない。
  そして、採決は見送られる。これも我々には理解しにくいことなのだ。

◎3月22日(木)
  二つの会を統合した新しい会を検討するための集まりを。
  4月1日を設立総会とし、会の内容、および会則案を話し合い、案内状の発送を急ぐことにする。
   ※案内状

◎4月1日
  「戸山団地の大けやきを考える会」と「大けやきを守る会」とを発展的に統合し、『大けやきの会 (アーバン ジャイアンツ)』となる。
   ※ご挨拶と会則

◎4月5日(木)
  約束の1日前に、大けやきの伐採という暴挙に出た東京都に対して、2月8日に提出をしました住民監査請求の結果が出されました。
  「本件請求は、理由がないものと認める」という結論でした。“事実関係の確認”では、監査対象局、すなわち住宅局の説明だけが一方的に記述されているのみで、こちらの陳述したものは皆無といっていいほど触れられていません。したがって、歪曲された事実関係の認識でもって判断されている、というよりは、監査委員は公平な判断をしよ うなどというつもりはまったくなく、はじめから恣意的に既定の結論に導いていったか、でなければ多くを東京都の監査事務局にお任せだったのではないだろうかと疑ってしまいました。
  内容を問うことなく「可能なかぎり緑化に努めてきた」という住宅局の言葉を鵜呑みにしているばかりか、樹木医有田氏の報告書を最大限に活用し、移植が難しいということだけでなく、現在の位置で生存させることすら非常に困難であると示されているとするのには呆れてしまいます。有田氏は、「樹勢としては良好と判断する」としているのですから。
  あげくのはては、「条例は理念の既定であって」「具体的な義務を課したり、規制をするものではない」といっているのですから、都合が悪けりゃ条例なんか守ることないですよと監査委員がいっているようなものです。
  そして、私たちがいちばん問題にしたのは、堀報告書の扱いです。都への公開質問書でも、その回答がなかったのですが、なぜ堀大才氏の報告書ではいけないのか、もしどうしてもいけないというのならば、説明すべきです。1月29日、堀氏がまずご自分の立場を明確にして、住宅建設事務所の所長と建設課長が了解を求めてから、診断結果を直接お話しした事実を陳述しているのに、監査委員もまた、そのことに関して一言も触れていないのです。
  最後に申し訳程度に、「期限を待たずに伐採を行ったことは適切とはいいがたい」が「違法・不当とまではいうことができない」また、「樹齢の長い巨樹は、都市において貴重なものであり、今後とも、その取扱いについて特段の配慮が望まれる」としているが、なぜか歯切れが悪い感じがします。
  監査制度そのものが問題なのでしょうが(さらに改悪されたものが提出されようとしているとか)、私たちは不服いっぱいでした。
   ※住民監査請求監査結果

  記者会見をし、住民訴訟を視野において検討すると訴えました。

◎4月6日(金)
  朝日新聞は『大けやき伐採監査請求棄却』、東京新聞には『適切とは言い難いが…監査請求を棄却』とありました。他読売新聞も取り上げています。

◎4月15日(日)
  「大けやきの会」では、臨時例会を開き、監査請求の結果を検討しました。そして、とにかく、今後の樹木・みどりを保護するためにもやはり、住民訴訟をすすめることに決定をし、至急作業を始めることにしました。経費のこともあって、未熟で経験不足の私たちが弁護士を頼まない本人訴訟でやろうというのですから、難しいことがたくさん出てくると思います。何せ監査結果の発表から30日以内に手続きしなければならないのですから時間もありません。ぜひ皆さんのお力をお貸しください。経験談、アドバイス等ありましたらよろしくお願いいたします。

◎5月2日(水) 住民監査請求の結果を不服として《住民訴訟》を提出
  4月5日、私たちが東京都監査委員に住民監査請求をした結果が出されました。結果は、あまりにもご都合主義の法令解釈、事実関係もまた、都合の悪い部分を無視した住宅局の一方的な言い分のみを取り上げての判断であることは先にお知らせしました。
  結果を不服とした私たちは、住民訴訟の準備にかかっていましたが、5月2日午前、原告10名を代表して春日と中村が東京地方裁判所に訴状を提出し、正式に受理されました。
  弁護士に依頼しない本人訴訟でやろうというですから、訴状を仕上げるのも手探りの状態でしたが、ほんの一部の訂正だけで受理されほっとしました。今後裁判を進めるためにはますます難しい局面が出てくるでしょう。
  それでも私たちは、21世紀の人間のあるべき生活、文化を考えながら、行政がこれまでの開発優先から、人間を優先した本来の姿勢を取り戻してもらうためにも、素朴で、素直な願いを訴えていければと思っています。
  たくさんの方のご支援、よろしくお願いします。
   ※訴状



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