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新宿区百人町4丁目の大けやき伐採をめぐる問題



文責: 春日武夫

6. 大けやきを残す運動の経緯 その3

            《2001年1月25日〜2月3日》


◎1月25日(木) 大けやき伐採予定当日。国民会議(中村敦夫主宰)のメンバーが、伐採中止をハンドマイクで訴えチラシを配る。住民もフェンス越しに見守る。すでにブルドーザーが大ケヤキのの周りの土を掘り起こし何台ものダンプカーが土を運びだそうとしている。ちょうど9時、樹にハシゴがかけられ作業員が登る。それを見た国民会議の根本氏が樹の下に駆け寄り作業員に中止を求める。続いて駆け寄った一部住民も加わり押問答の後、作業員がハシゴをはずす。

  その後居合わせた東部住宅建設事務所渡部所長と面談。樹の大切さを訴え、樹木医有田氏の報告書をただ一つの根拠に科学的と都が主張するのは間違いではないのかと。その結果2月2日を限度とし、改めて専門家の調査を求め、再度話し会うこととした念書を交わし所長がサインをする。樹は1週間生き延びた。(次項7 資料1参照)

  新宿区新聞『巨木伐採を一時中止 移植を新宿区が申し入れ』の記事。

◎1月26日(金) 朝日新聞に『都営住宅改築で絶命直前 大ケヤキまず命拾い』と。

◎1月28日(日) 午後4時、大ケヤキを見ようと国民会議が呼び掛け、昨日の大雪で 白く被われた百人町住宅建設地前に20人ほど集まる。それを聞いた団地住民20人ほ どが集まり“伐採をし建設促進!”を叫び見学者を取り囲み押問答となる。
  団地会は伐採やむなし建設促進を表明。しかし団地幹事会でも討議をされず、ましてや団地集会なども開かれないまま役員の一存で判断したと思われる。問題点をできるだけ正確に一般住民に提供するどころか、戸数が減る、工期が大幅に遅れるなどと逆に不安をあおるような情報が飛んでいる。また団地住民以外は余所者扱いにして聞く耳をもとうとしない。「孫に残そう、再生若木!」「人間優先、建設促進」等の団地会スローガンは、なんかへん!

◎1月29日(月) 10時、財団法人日本緑化センター技術主幹の堀大才氏に大ケヤキの診断を依頼し現地へ案内する。堀氏は、日本に樹木医の制度導入し認定する立場なので樹木医資格はないが、移植などの研究者としては日本の第一人者である。どちらか一方の側にたつものではなく、一介の緑化技術者として純粋に技術的観点から判断していただくという約束である。
  渡部所長・田中課長は、堀氏が樹木医でないことを指摘したが堀氏の立場を説明し了解していただいた上で、住民?報道関係者とともに診断結果をうかがう。
 その結果は、移植は困難を伴うが可能であるし、移植してでも残す価値のある樹であるとのこと。2月2日までに文書にしていただき提出することに。

  国民会議が中心となって“大けやきを守る会”(代表 石岡春二)を組織し署名集めを始める。当面大ケヤキを守ろうとする会が2団体となり、協力しながらそれぞれの方向で進むことになる。

◎1月30日(火) 朝日新聞第2東京版に『技術的に移植可能 診断書提出後都側と住民話し合い』との記事。

◎1月31日(水) 午後4時、<大けやきを守る会>が都庁記者クラブで記者会見。
  午後4時50分、環境局長あての要望書を大津自然環境部保全課長に、5時5分、戸井住宅局長宛ての要望書を高木建設部調整課長に手渡す。(次項7 資料2)

  春日の独断で都知事への要望書を提出。(次項7 資料3)
 
  堀氏より大けやきの報告書をファックスしていただく。(次項7 資料4)

◎2月1日(木) 読売新聞都民版に『大揺れ 樹齢200年の大ケヤキ』、東京新聞には『新宿区のケヤキ伐採中止を求める』との記事。

  11時15分、都庁。高木調整課長に堀報告書を手渡す。住民も8人参加、それぞれ大ケヤキに対する思いを語る。検討のうえ、植田、春日、根本の3人には話し合いのための日時等連絡くださいとお願いし帰る。

  午後5時頃、牛山さんがメールなどで全国から短期間に集めた1200名ほどの署名を調整課員に手渡す(なんとこの時すでに伐採に始まっていたようだ)。

  午前中に緑化センター堀氏のもとに渡部課長から電話が入り、「報告書は未だか」と聞いたという。依頼者でもないのにおかしなことをする。

  午後5時頃春日の留守宅に渡部所長より電話があったと出先に連絡がある。堀報告書を「一個人の技術的レポートと解釈する」と伝えたという。6時頃、住宅建設事務所に電話をし所長に確認したいと話すが、出先なので連絡を取り電話をさせるという副所長からの答えであった。だが電話はなかった。
  その後確認すると植田宅には留守電で「樹木医の正式な診断書ではないので、参考にはしたが、当局の方針は変わらない」と所長のメッセージが入っていた。

  都は樹木医制度での堀氏の役割を承知しながら、資格がないと無視にかかる。このような非常識な発言は予想できなかった。2日24時以後に伐採の強行を予測し、対応策として明日2日中に新たに樹木医の診断書を用意するか、今一度都と話し合いの場をもてるように手を尽くすことにして別れる。

◎2月2日(金) 午前0時45分頃現場近くをタクシーで通りかかった者から電話が、大ケヤキが倒されていると。近くの者がすぐ集まる、タクシーで駈け付ける者も。
  樹は、根をブルドーザーで掘られ強引に引き倒されたようだ。人々が家でだんらんを楽しむ夜の時間を見計らって、2日までは待つといった私たちとの約束を丸1日残した2月1日夜に。悲しみと怒りをもって樹の無残な姿をフェンス越しにただ見つめるしかない私たちを、都という魔物が「樹がなくなりゃもうどうすることもできないだろう」と嘲笑っているような気がする。
  一度帰宅し7時半頃よりまた集まり、8時頃より枝を幹を切り刻まれていく光景をひたすら見ているだけ。寒さがしみる。
  何時に樹が倒されたか明らかでない。1日午後5時ころから準備が開始され、樹が倒されたのは8時過ぎらしいと推測されるだけだ。

  いつ決定したのか、堀氏の否樹木医の報告書が出ても出なくくても1日夜に伐採することは、都住宅局として何日か前から決めていたのだろう。都は、昨年末の最初の話し合いから住民の声を聞きましたというアリバイを作っていたにすぎないのだ。

  午後3時、高木調整課長に抗議の申し入れをし、住宅局長宛ての抗議文を託す(次項 7資料5)。課長の説明は「堀氏は樹木医の資格がない、1日で樹木医の診断書を提出するのは不可能だと判断し伐採に踏み切った」と言うのみでそれ以上を求めても言を左右にして説明なくらちがあかない。

  午後4時40分、都庁記者クラブで、緊急の記者会見を。都民を愚弄した都の暴挙を訴える。

  今後<戸山団地の大けやきを考える会><大けやきを守る会>がともに、都の許しがたい横暴を糾弾し、掛け声だけで抜け穴だらけの“自然保護条令”“みどりの条令”にもの申していく方向をめざすことで一致。

◎2月3日(土) 朝日新聞『大ケヤキとうとう切り倒された 期限1日前に連絡 その夕方に実行』、読売新聞『大ケヤキ突然伐採 都が“延期約束”破る」、東京新聞『約 束期限の前夜都がケヤキ伐採』の記事。



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