[HOME]



新宿区百人町4丁目の大けやき伐採をめぐる問題



7 前項6の資料《1/25〜2/3分》



◎資料1 <25日東部住宅建設課長と交わした念書(手書キサレタモノノ写シ)>(1/25)

 (I) 都は「敷地内」の移植を検討し26日朝までに返答する。
 (II) 都からの返答によっては、住民は2月2日までに、他の樹木医の診断を求め再度話し合う。それまでは伐採を行なわない。
                     (本人署名)渡部 景之   H13,1,25
                    (他別紙に立ち合った住民5名の署名あり)

  【その他の付帯事項として以下が記されている】

 ○移植を検討して26日までに都が住民に返事。
 ○生き残るかの問題。5年以上生きるか、別の樹木医の診断を求める(2月2日まで) 
 ○移植先の問題。2年以上残るのであれば都が考える。
 ○予算の問題。2年以上残るのであれば都が出す。出す人がいれば他の問題は都が考える。
 ○技術の問題。2年以上残るとすれば都が考える。
 ○移植の技術レポート、移植予算の見積もりは、都が住民の側に提出する。
 


◎資料2 <大けやきを守る会>の要望書(1/31)

                               平成13年1月31日東京都住宅局
 局長 戸井昌蔵 様
                                大けやきを守る会
                                代表 石岡はるじ
         新宿区百人町四丁目大けやきについて(要望)

  標記「大けやき」について、下記の理由から伐採を中止し、保存を要望します。

                    記

1,東京都は、「21世紀の東京の緑づくり」を推進する「緑の東京計画」の中で50年 後における東京の緑の望ましい姿として、「水と緑がネットワークされた風格都市・東京」をあげています。そして、都市が風格を備える上で緑の果たす投割の重要性について「緑はその成長に携わり、見つめてきた人との問に密接な関係性を創っていきます。地域に育つ巨樹は、人に幼い頃の記憶を呼び起こさせ、生きてきた年月と、世代を超えた存在を意識させます。このようにして、都市の緑は、都市空間における位置の座標としてだけでなく人とともに生きてきた時間の座標ともなります。こうした関係が都市の風格の基本であり都民が主役となって緑のネットワ一クを形成することにり、風格都市・東京が実現されます。」と適格に指摘しています。

2,私たちが保存を要望している「新宿区百人町四丁目大けやき」は、推定樹齢200年、幹回り3mを超え江戸時代から、3世紀に渡り、住民の生活を見守ってきました。震災・戦災に耐え地域の子どもたちに「けやきの城」と親しまれ地域のシンボルとして生き続け、新宿区の市街地に立つものとしては最も大きな木です。まさに上記の「密接な関係性を創り人とともに生きてきた時聞の座標」になっています。
  けやきは新宿区の「区の木」と指定され、この地域の中学校の校章にもなっていることも申し添えます。

3,「緑の車京計画」を実質的に支える「東京における自然の保護と回復に関する条令」では、第7条(公共事業における義務)として「公営住宅等の建設、 改修等の公共 事業の計画を定め、及びこれを実施するに当たっては、自然の保護と回復に十分配慮しなければならない」としています。さらに、新宿区の「みどりの条例」においては、幹まわり1、2メートル以上の樹木は保存樹木と指定し、助成金を出して保存に務めています。従って、大けやきを伐採することは、車京都の政策・条例に反するとともに、地元新宿区の自治権をも否定することになります。

4,これらの理由から、「新宿区百人町四丁目大けやき」の伐採を中止し保存することを要望いたします。
                                    以上


◎資料3 春日送付の都知事への要望書(1/31)

                               平成13年1月31日東京都知事 石原慎太郎殿
                        新宿区百人町3丁目  春日 武夫

            東京都は大ケヤキを残す英断を!

 百人町4丁目都営住宅建替え用地内の、姿形もよく、長年近隣の住民に愛されてきた樹齢200年の貴重な木である大ケヤキが伐られようとしています。  伐採は、温暖化、砂漠化が問題となっている都市部の環境面からも、緑の保護・育成を大きくうちだしている東京都や新宿区の理念に反するものです。小さい木を植え直し面積だけうめても、緑に対する満足度はありません。
 ぜひ移植してでも、残していただくようお願いいたします。

 大ケヤキは、これだけ大きい樹はもはや山の手線内およびその周辺にはないだろうというような文化的・歴史的意義ある巨樹で、新宿区の木でもあります。その意味で団地住民のみならず、近隣住民、新宿区、そして東京都に暮らす人々の共有財産です。

 木は、人々に潤いをもたらします。子どもたちの情操学習や、環境学習などの教育的意義があります。気温温度の調節、大気の浄化、騒音の軽減等など環境面での意義があり、防災にも貢献します。
 さらに高木・巨樹には、古代より親しみを感じ人々がその下に集い、遊び、話を交わしてきた魅力があります。
 高層住宅が住民を孤立させ、自然と係わる機会を奪いかねない現状における大ケヤキの意義は何にもまして大きいものがあります。とくに老人の多いこの団地において大ケヤキは、人々を結びつける重要な役割を果たすと思います。

 以上のようにたいせつな樹であることを無視し、住民の強い愛着にも配慮しないで建物が樹にかかるような設計をしたのは都です。しかも、それを大ケヤキを残してほしいと願っている住民に全く説明をせず、伐採1カ月前まで「残す」との説明をした責任は重大です。
 しかし、少しでも早い入居を待っている住民感情もありますので、昨年12月21日、戸数を減らすなどの設計変更をしないですみ、工期も遅れない移植の提案で合意しました。
 そのうえで、1月6日の樹木医の診断となりましたが、樹が移植を生き残ることは不可能であるという判定でした。都はその診断結果を唯つの科学的根拠とし伐採を通告してきました。その際の話し合いにおいて都の担当者は、工期や日照などを懸念すると伐採やむなしという住民に、これらの懸念にかかわる具体的な情報を提示しないで、逆に感情をあおるような発言をし住民に対立ができるように誘導したことは許しがたいことです。また、担当者は、既に設計変更しないことについては合意済であるにもかかわらず、戸数を減らすなどの発言を続け住民の不安を喚起しました。

 1月25日、東部住宅建設事務所渡部所長に、改めて移植の可否を調査し再度の検討をしていただくようお願いをしました。そこで29日、移植等に関し日本で最先端の技術をおもちの先生をお招きし公平な立場で純粋に技術的観点から見ていただきました。その結果、移植にリスクはつきものであるが、この木が特別に難しというわけではないし、移植して残す価値のある樹とのことでした。

 1)樹の価値、2)移植の可能性、3)工期の遅れに対する住民の不安、などを踏まえ、ぜひいますぐ移植決定の英断をお願いいたします。

                (連絡先 省略)


◎資料4 堀大才氏の診断報告書(2/1)

                               平成13年1月31日

      新宿区百人町都営住宅立替に伴うケヤキ大木の移植について

                            財団法人日本緑化センタ一
                             技術主幹   堀 大才

1.調査日時  平成13年1月29日(月)10時〜11時
2.場  所  新宿区百人町4丁目都営住宅
3.調査結果
 1月27日(土)の降雪の影響で足場が悪く、しかも時間も極めて短かったので十分な調査を行うことはできなかったが、一応の結論を得たので以下に記す。

1)樹木の状態
 まず外観から地上部の衰退度判定を行ったが、その結果は表のとおりとなった。なお、評価項目は着葉期であれば「葉の大きさ」「葉の色」が入るが、落葉期であるためそれらをはずし、代わりに「芽の大きさ」を入れて評価した。

>
項目樹勢樹形上枝の枯損下枝の枯損枝の伸長量芽の大きさ枝葉の密度大枝・幹の損傷樹皮の新陳代謝胴吹き・ひこばえ評点(平均)衰退度区分
評点11212213111.5II
 
 
評点 0:すこぶる良   衰退度区分 評点平均0〜0.8未溝:良(I)
  1:良    0.8〜1.6未満:やや不良(II)
  2:やや不良    1.6〜2.4未満:不良(III)
  3:不良    2.4〜3.2未満:薯しく不良(lV)
   4:著しく不良     3.2〜4.0 :枯死寸前(V)

 衰退度区分は5段階評価の(II)(やや不良)で、いくらか衰退は認められるものの衰退が進行しているという状態ではない。しかし、以前の落雷により主幹上部が枯損し、その後その部分から腐朽が進行しており、幹下部も大きく開口している状態なので、樹幹内部は全体が空洞化している可能性が高く、物理的には弱い状態である。
 また、本樹は周囲よりもやや高い状態で存在する。現在は除去されているが、根元周囲は高さ1,2mの大谷石の石積みで囲われていたといウことである。本樹の樹幹下部には板根がよく発達しているが、このような根張りとなったのは高植え状態と石積みが影響していると考えられる(図参照)。
 なお、現時点でも枯れ葉が脱落せずに小技に着いたままになっているのがいくらか認められたが、ケヤキの場合、前年の夏に乾燥を受けると翌年発生する枝の多くが小型化し、花を沢山着け結実する傾向が見られる。実を多く着けた小技の葉は著しく小さく正常な黄葉・落葉現象を示さず、初秋の段階で黄褐化するが離層が形成されないのでいつまでも葉が着いている。そして木枯らしが吹くと実を多くつけた小枝は折れるが、その時黄褐化した葉が小枝を遠くヘ飛ばす働きをする。ゆえにこの現象はケヤキの乾燥に対する反応の一つであり、樹勢が衰えてるという証拠ではない。本樹の場合、地面よリも一段高いところに生育しているので、乾燥影響を受け易い状態であったのだろう。

2)移植の可杏判定
 根回しを行う時間的余裕は全くない状態にあるので、直接移植が可能であるかが問題となる。前述のように衰退度区分はUのやや不良なので、その程度であれば筆者のこれまでの経験からは生理的に十分移植可能であり、全体の状況から判断しても移植可能と考えられる。
 しかし、幹の空洞化は樹体の物理的強度を著しく弱めているので、移植の際に過度の荷重が樹幹にかかると幹が破壊される恐れがある。
 さらに、板根が発達して根元径が極めて大きくなっているので、移植時の根鉢もそれに応じて大きくしなければならず、移植木の重量は極めて重いものとなる(仮に根鉢径7m、 根鉢厚2、5m、土の容稽重1、5kg/lとすると、移植木の重さは全体で150tほどになる)。
 ゆえに、移植するにしてもクレーンでの吊り上げは不可能であり、立曳きとせざるを得ない。しかも立曳きでは遠距離運搬はできないので、現在の樹木のある位置からそう遠くないところに植栽場所を見つけなければならない。そのうえ、移植先の土壌条件も問題となる。移植木がどのように良い状態であっても、移植先の土壌条件が悪ければ枯れてしまう可能性が高くなる。現実に、樹木の移植の失敗原因のかなりの部分が移植地の土壌条件不良にある。本樹の場合も移植地となる可能性のある所はいずれも表層の良質土がはがされ重機による転圧を受けており、植栽基盤としては極めて劣悪であると考えられる。
 以上のように本樹は活力状態、樹形状態及び移植技術面から判断すれば移植は可能だが、決して容易ではなく、万難を排して移植しても枯れる可能性はある。しかし、本樹のように立派な樹木は少なく貴重性はきわめて高いので、移植か伐採かのニ者択一を迫られるのであれば、筆者は移植の方を推奨する。

3)移植に際しての注意事項
 筆者は造園工事業者ではないので、工法及び経費については言及しないが、移植に当たっての樹木の取り扱いの面から注意事項を以下に列挙する。これらのことが厳守されれば移植の成功の可能性はかなり高くなるであろう。移植が成功するかどうかは、樹木の生理作用を最大限考慮した移植作業の丁寧さ及び移植先の土壌によリ大きく左右される。

(1) 適期(2月下旬〜3月)に移植すること。
(2) 根回しなしの直接移植なので、可能な限リ大きな根鉢径・根鉢厚とすること。以前の石積みの内径をそのまま根鉢径とすることができればよい。
(3) 断根量に応じた剪定は当然必要となるが、過度の剪定は枝葉を著しく減少させて光合成量を減らし、発根能力も低下させる。さらに、樹木の価値そのものも著しく下げてしまう。ゆえに、剪定は枯枝、衰退枝、支障枝を中心とした軽度の枝抜き剪定とし、枝葉量は少し減らしても樹冠の形は維持すること。
(4) 根の切断の際、可能な限り丁寧な作業を行ない、切断面の割れ、樹皮の傷や浮き上がりが起きないようにし、切断面も鋭利な刃物で切り戻しをすること。
(5) 切断面には泥などが付着しないようにして、遠やかに防菌癒合促進剤(トップジンMペースト剤など)を塗布すること。
(6) 根巻きは根鉢を崩さないようにしっかりと行う。材料は移植後速やかに腐植化するものを使用すること。
(7) 運搬時に樹幹や大枝に大きな荷重がかからないようにすること。
(8) 移植先では、植穴を大きく(根鉢径の2倍程度)掘り、土壌を膨軟にして通気透水性を良好な状態にすること。また、植穴を掘っていて夾雑物が出てきた場合は除去するもともと高さ、1,2mほどの高植え状態にあった樹木なので、移植先でも同様の状態としたいが、それが無理であれば最低でも50cmほど高植えとしたい。
(9) 埋め戻しの際、根鉢の周囲に完熟堆肥(C/N比が15〜30の完熟した堆肥、バー ク堆肥であればC/N比25〜30)を入れ、また埋め戻し土にも完熟堆肥を20〜30%混ぜ る。
(10) 水極用の水は液肥(ハイポネックス等)を少量混ぜてごく薄い液肥(例えば通常500倍 液として使用するものであれば5,000倍にする)にして、それを使用すること。
(11) 根鉢の上及び植穴周囲に厚さ10cm程度で完熟堆肥をマルチすること。
(12) 移植後数年問は堅固な支桂をして、強風時に根鉢が揺れてせっかく伸びた細根が切 断されることのないようにすること。
(13) 夏季の潅水時にも前述の薄い液肥を使用する。

 ※根茎予想図(大きい根は、ほぼ下に伸びている図)が添付されている。


◎資料5 住宅局長宛ての抗議文(2/2)
                               平成13年2月2日東京都住宅局長 戸井昌蔵様
                         戸山団地の大けやきを考える会
                         大けやきを守る会     有志

         約束を違え、大ケヤキを伐った都の暴挙を許すな!

 東京都は、新宿区百人町の樹齢200年という大ケヤキを、闇に紛れて押し倒すという暴挙にでました。とうてい許されることではありません。

 私たちは、文化的・歴史的意義のある巨樹、新宿区の木でもある大ケヤキが伐られると聞きなんとか残す方法はないかと、都と話し合ってきました。直前まで残すと住民を欺いてきたのですから、設計変更を求めても当然ですが、移植もやむなしとして話し合ってきました。いろんな経緯のなか、最後の努力を約束しました。
 東京都は、約束違反をしました。新たな樹木医の診断を求め再度話し合うとした1月25日に交わした約束は、2月2日が期限なのです。
 私たちは、(財)日本緑化センターの堀大才先生にお願いしました。そして「移植は十分可能、移植すべき価値のある樹です」との堀先生の報告書を1日11時すぎに都に提出しました。これで再度話し合う条件ができました。
 ところが都は、なんら伐採の通告することなく、約束の丸1日前の深夜に重機で大ケヤキを押し倒すことを強行したのです。
 ただひとつの理由は堀先生が樹木医ではないということのようです。
 樹木医を日本に導入推進した堀先生は、樹木医ではありません。樹木医を認定する立場の人だから資格がないのです。移植の最先端の技術に精通していて、日本では先生の右にでるものはいないだろうという方なのです。
 その堀報告書に対して反論できないので無視にかかったのです。世の中こんなことが通じるのですか。都を信用できないなんてなまやさしものでない、人間不信になって人と人の関わりがもてなくなりそうです。
 少年の犯罪をと大人がいいますが、その種を大人が播いているのは明確です。
 こんなことが許されていいのでしょうか。許していいのでしょうか。役人なんてそんなもんだよと達観したように見過ごしていいのですか。
 都は、都に関係している樹木医や業者まで巻き込み、話し合いのポーズをとり住民の意見を十分に聴きましたというアリバイ作りをやってきたのです。愚かな私たちは都の言葉を信用し、期待したこともありました。今思えば全て巧妙に仕組まれ、常に伐るという終決に向かって進んでいたのです。堀先生という都が思ってもみなかった制御装置外の出現によって狂気に走ったのです。人の見てない間の深夜の伐採となったのです。

 樹齢200年の樹は200年経っても次があるかわからないのです。緑を大切にすることは、温暖化などの地球の危機を考え、物質よりも心の豊かさを求める21世紀のいちばんの課題です。巨樹は、その下に人が集い遊び、語る楽しさを与えてくれる力があります。 それなのに、樹をも無視し、人に潤いが必要なことも無視し、住む箱を造ってやるのだから文句いうなという、都の姿勢が透けて見えるといったらいいすぎでしょうか。今度の建物について未だくわしく説明が住民になされてないのです。
 このままでは、都の住民無視はいつまでも絶えることがないでしょう。怒りよりもただただ絶望するばかりです。



[HOME] [戻る] [次へ]